表紙です。 |
QE2のブリッジ(航海室)は、シグナル・デッキ最前方に設置されています。ブリッジは中央の操舵室(航海に必要とされるあらゆる設備が置かれています)と左右両舷に伸びるオープン・ブリッジ・ウィングに分かれています。操舵室の裏には海図室があり、航海図、海事関連書籍などの保管に使われています。 当直士官は操舵室の全てを取り仕切ります。ブリッジは2人の航海士(1等航海士、2等航海士)によって1日3交代の24時間勤務体制が取られています。1日は4時間ごと6回のシフトに分けられており、それぞれの勤務時間は次の通りです。 12〜4当直:午前0時〜4時、正午〜午後4時 4〜8当直:午前4時〜8時、午後4時〜8時 8〜12当直:午前8時〜正午、午後8時〜午前0時 大部分の航海士はマスター・マリナーズ(商船の船長)の資格を有し、それは英国海峡を行く船に命令を下すことが出来ることを意味します。QE2には9人のマスター・マリナーズが乗船しており、その手に安全な航海を委ねています。 航海士の最重要最優先業務は船の安全な航海ており、続いて、目的の港へ安全かつ予定通りに船を到着させることです。この業務はあらゆる瞬間の船の位置、船を取り巻く状況(他の漁船、ヨットなどを含む船舶の現在地と航海に及ぼす危険性、石油剤井装置等の有無、他)及び気象状況(雨、霧、雪、強風、気圧の変化他)に関する十分な状況の把握とそれらが船の安全性及ぴ乗客の船上生活(快適なクルーズ)に及ぼす影響など、あらゆる知識が必要とされます。また、彼らは船のスピードを制御する責任も担っており、エンジン・コントロール・ルーム(機関室)の当直士官と共に船を次の港へ定刻通りに到着させるために働いています。 |
レーダー (RADARS/電波探知機) |
KRUPP ATRAS 8600 AUTOMATIC RADAR PLOTTING AID |
航海土はレーダーによって、その視界範囲内にある船、漁船、ヨット、プイ(浮標)などの存在、及び、船周辺の海洋の表面を陸地から反射される電波の表示によって知ることが出来ます。オートマティック・レーダー・プロッティング・エイドはレーダーの中にコンピューターを内蔵しており、それはレーダー・スクリーン上に映し出される他の船の反射電波の動きを分析し、QE2の航路やスピードを確認します。この機械は20隻までの船のデーターを一度に提供することが出来、そのデーターの中にはQE2との間の距離と方角、双方が最も接近する位置と時間、及び現在の航路と速度が含まれています。また、レーダーは船が頻繁に訪れる港のレーダー・マップを入力(記憶)する機能も備えています。この機能は、実際にその港へ入港する際のレーダーの画像と重ねて用いられ、航海士は迂遠かつ確実に主要な灯台、プイの位置、そして船が往生したり、浅瀬に乗り上げる危険のない安全な海域を知ることが出来ます。全ての情報は"ラスタースキャン"として知られているテレビ型のスクリーンに係数表示されます。二つのレーダーはそれぞれ同じ波長で使用することも、別々の波長で使用することも出来ます。3センチの波長はより鮮明な画像を送り、10センチの波長は雨や大気、気象条件の悪い中でも高い透視度を有します。 |
ログ (LOG/船の速度を測る測定器) |
RAYTHEON DSL 250 DOPPLER SPEED LOG |
船の速度は海底、及び大陸棚までの深さを測る水深度表示器と連動して決まります。深海域に入ると船の速度は水温の層によって決まり、水深度表示器は作動しなくなります。 |
RAYTHEON EML 201 ELECTROMAGNETIC LOG |
この測定器は水深に関わりなく速度を決めることが出来ます。 | |
サテライト・ナヴィゲーター (SATELLITE NAVIGATOR/衛星自動操縦機) |
MAGNAVOX MX 1105 SATELLITE NAVIGATOR |
QE2のサテライト・ナヴィケーター受信機は衛星から送られてくる電波を継続的に受け、宇宙空間での衛星の正確な位置を掴むと同時に、QE2の位置も掴みます。 地軸の南北を通過して地球を回る衛星は6基あり、地球はそれらの衛星軌道の内側で回っています。従って6つの一定不変の軌道は球状の鳥がごを連想させます。衛星からの位置に関する情報と、送られてくる信号の周波数の変化を捉えることによって、船の受信機は船の正確な位置を掴むために計算し続けます。 船の正確な位置は、航行していることから生じる誤差を踏まえながら、コンピューターと羅針盤から算出される数値と、コンピューターと速度推測機から算出される数値の中間で、通常約90分の間隔で掴むことが出来ます。サテライト・ナヴィケーターは羅針方位、又は大圏航法のどちらかを使うことにより、港と港の間の航路や距離を計算するコンピューターとしても用いることが出来ます。 |
RACAL MK 90 GPS SATELLITE NAVIGATOR |
最新の衛星利用航海技術、GPS(GlobalPositioningSystem)は、世界中のどこででも300フィート以内の正確かつ継続的な位置の読み出しをするため、6つの面で地球の軌道を回る24の衛星ネットワークを使用しています。GPSはナヴィケーション・コンピューターを有しており、それは利用者に完壁な航路計画を提供することが出来ます。また、この機械は到着予定時刻、辿ろうとしている航路の距離を計算し、操縦に関するアドバイスを出すことも出来ます。 | |
双曲線航海補助器 (HYPERBOLIC NAVIGATION AIDS) |
これらの航海システムは陸上の送電ラジオ局で構成されており、送電局のグループはそれぞれに厳密な波長形態を持っています。船は受信された送信波に自身のラジオ受信機を合わせます。陸上の受信機から与えられた送信波を読み取るには、特別な航海図を用いるか、または緯度や経度に置き換える必要があります。一組のラジオ局から送られる信号は、大洋を横切る双曲線で示されます。 それゆえ、もし二つの双曲線が分かれば、それらが交わった場所から船の位置を測ることが出来ます。今日、最もよ<使用されている3つのシステムは、デッカ、ローランC、オメガです。 |
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DECCA NAVIGATOR | このシステムは約100キロヘルツで作動し、沿岸航海の際に短/中間波の範囲で高い精度を誇ります。陸上の主要局と3つの支局の間で継続波位相対比システムを運行し、約200海里の範囲で正確な数字を出すことが出来ます。このシステムは、ヨーロッパ、南アフリカ、日本で広く使われています。 | |
LORAN C (LOng RANge Navigation System C) |
このシステムは、約100キロヘルツで作動し、陸上の主要局(M)と4つまでの支局(W.X.Y.Z)で同調信号と波動電送の送信により構成されています。 陸上の主局と4つの支局間の距離は600海里以上あり、もし天候その他の条件が良ければ各局から2000海里までの間でかなり正確な位置を掴むことが出来ます。 このシステムは、アメリカ、北大西洋、太平洋で用いられています。 |
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OMEGA | これは潜水艦用に開発されたシステムで、10キロヘルツで作動し、世界中どの範囲でも使えます。QE2船上ではサテライト・ナヴィゲーターに組み込まれており、追跡やクロス・チェックのために使われています。 | |
自動操縦装置 (AUTO PILOT) |
SPERRY U.G.P AUTO PILOT | このシステムは船体中央前後にある独立した制御用計器盤となっており、それには船の舵輪、非追跡操縦システム、そして自動操縦装置がついています。海上では自動操縦に固定されますが、港に接近した時や、港湾内が混雑している時、或いは霧や他の視界を遮るもののある状況では舵手が手動による操縦を行います。自動操縦装置は、ジャイロ・コンパスに連動しています。 |
羅針盤 (COMPASSES) |
SPERRY MK. 37 GYRO COMPASSES(x2) |
それぞれのコンパスは自由に動く回転儀(ジャイロ・スコープ)から出来ており、その地の南北子午線と同調しようとする軸の回転によって制御されています。回転儘は15ポンドの回転軸を有し、1分間に1200回転のスピードで回っており、およそどんな外力の影響も受けません。このコンパスから、航海士は方角に関する情報を得ることが出来ます。2つのコンパスからの情報はフィルターとアンプを通過し、ブリッジのコンパス・リピーターへ送信されます。同様に舵取り装置、衛星テレビ、衛星通信ドームヘも伝達されます。 |
MAGNETIC COMPASS LILLEY & GILLIE MAGNETIC COMPASS |
この型のコンパスは基本的に18世紀以来ほとんど変わっておらず、"電力から切り離されている"という点で、いまだに重要な役割を果たしています。コンパスは、船が磁石を誘導する力と永久磁カへの影響を最小限に押さえる木製のケースの中に、柔らかな鉄の小片と永久磁石と共に入れられています。 | |
船首用推進すき (BOWTHRUSTERS x2) |
船の舳先にある2つのトンネルで構成され、船の片側から他方の水中へ伸びています。それぞれのトンネルには操縦可能なピッチ・プロペラがついており、QE2が船首(舳先)の動きを制御しながら港へ出入りする時に使われます。船が停止もしくはほとんど停止した状況の時、船首を左右に動かすことが出来ます。これは船が着岸する際の船の運転に大いに役立ちますし、また、少ない数のタグボートの使用で着岸できることを意味します。高遠で航海するとき,QE2の船体が海中で流線形を作るため、船首用推進すきのトンネルはスチール・ドアを推力回転させることでトンネル内部を空にします。 | |
安全装置 (DENNY BROWN STABILISERSx4) |
停泊中、スタビライザーは船体にたたみ込まれていますが、いったん港から出ると船体に対し90度に水平に広げられます。ジャイロスコープ(回転儀)の制御の元で作動し、その羽根は飛行機の下げ翼のように上下に動かすことが出来ます。また、船の前進に対する水のスピードを利用しながら船の横揺れを避けるために船の低く下がった部分を突き上げたり、逆に高く上がった部分を下げたりして平衡を保ちます。この羽根は船が15ノット以上のスピードで航海する時にのみ使われます。また、スタビライザーは船体から約15フィートまで伸ばすことが出来、ある環境の元で(お客様にとっては余り心地よくない環境だと思いますが...)ボードデッキから見ることが出来ます。 | |
汽笛 (TYFON WHISTLES) |
QE2には3種類の汽笛があり、どれも半径2マイルの範囲で聞くことが出来ます。マストの上にはエア・ホイッスル(低い音)とエレクトリック・ホイッスル(電子音)がついており、船が入港するとき,音信号を送る際に使われます。また前方には船の視界が遮られた状況の元で使われる汽笛がついており、これは自動タイマーにより2分ごとに鳴らされます。全ての汽笛は毎日正午にテストのため鳴らされます。 | |
航海図 (NAVIGATIONAL CHARTS) |
海図室にはQE2が航海するおよそ世界中の海洋と港を網羅する約1500の海図があり、それらの大部分は英国海軍省水路測量部の印刷によるものです。英国海軍省が発行する海図は、一週間おきに世界中の航海士によって加筆訂正され、常に最新の状態を保っています。航海士達は一週間おきに行われる海軍への報告の際に、それぞれの海図の加筆訂正を報告するよう求められています。 | |
通信 (COMMUNICATIONS) |
ブリッジ/航海室内には.航海士が他の船やパイロット(水先案内人)、港湾関係者達と直接話が出来るよう、V.H.F.ラジオがつんであリます。また、船を取り巻<コントロール・ステーションに連結した電話回線も有しており、それは船の主要電話システムとは独立した装置になっています。なお、ブリッジでは全ての緊急非常事態に際する電話を取り扱っています。 |