Reports( 2003/03/19 現在 )QE2 エンサイクロペディア 機関長から


Back

QE2エンサイクロペディア
機関長から


QE2の機関長からの説明書類です。

ここで、内容をご紹介します。

クィーン・エリザベス2世号
チーフ・エンジニア(機関長)のデスクより
QUEENELlZABETH2
FROM THE DESK OF THE CHlEF ENGINEER


お客様へ

多くの方からエンジンルーム(機関室)を見学したいというご希望を寄せて頂いておりますが、高度の事故防止体制が敷かれていること、また安全上の理由により、残念ながら全てお断りしております。しかしながら、QE2の技術面について皆様に関心をお寄せいただくことについては、スタッフー同大変嬉し<思っており、この資料が皆様の疑問に対する解答となれば幸いです。
QE2の電力源はディーゼル機関です。このシステムを選んだ理由は、ディーゼル機関に対する元々の信頼性/確実性に加え、高度な柔軟性/適応性を有していることにあります。1986,87年に、それまでの燃料消費率の高いシステムに変え、1億ポンドを投じて9基のMAN L58/64(シリンダー・ターボ・チャージャー・ディーゼル・エンジン)を設置しました。このディーゼル・エンジンはG.E.C.ジェネレーター(発動機)を動かし、それぞれ10.5メガワットの電力を1万ボルトの電圧で発生させます。
船内で発生した電力は、変圧器を通して行う補助的な船体サービス及ぴホテル・サービスの機能に加え、プロペラシャフトのついた2基の主要推進モーターを動かすためにも用いられています。それぞれのモーターの最大出力は44メガワットで、最高遠度は32ノットです。
これらは、直径9メートル、400トンを越える重量の同位相の消音柱で構成されており、これまでに建造された海洋エンジンとしては過去最大のものとなっています。
28.5ノットの航海スピードは、9基あるエンジンのうち7基を使用するだけで維持することが出来ます。これは航海中でも航海日程に支障をきたすことな<、基本的かつ定期的なエンジンの補修点検作業を実施できることを意味します。このスピードを維持するために必要な燃料の消費'は、以前と同じ質の燃料(IF-380/Bunker“C")を使用しているにもかかわらず、以前のエンジンと比べて35%の燃料を節約することが出来ます。(この燃料は140度の圧力の元で加熱されると、室温で道路用のタールと同質のものになります。)
主要発電装置の他に、QE2は、船に必要なサービスを維持するための予備設備を備えています。エンジン内部の排気用吹き上げパイプには廃熱再生ボイラーが備え付けられています。これらは2基の石油加熱ボイラーに接続しており、この2基のボイラーが、燃料の加熱、新鮮な水や水泳用プールの水の保温、洗濯や厨房設備へ送る蒸気を加熱するために必要な熱量を提供しています。
また、ボイラーを循環したり、冷却水装置や洗濯及び飲料用の水を海水から作り出すために、4基のフラッシュ・エヴァポレーダー(蒸気濃縮器)を備えています。また、淡水化装置の仕上げとなる逆浸透器では一日に1000トンの新鮮な水を生産することが出来、その水は加熱又は冷却する前に処理タンクからサービス・タンクヘ移され、船内各部へ配送されます。
閉回路テレビ・システムは各設備の備えられたあらゆる場所を継続的にモニターに映し出し、異常の有無を確認する手段の一つとなっています。
消火システムは、各設備が設置された場所に同じ<設置されています。客室区域のスプリンクラー・システム用圧力タンクと継続的に水を放出する消火用揚水器によって、スプリンクラーと消火栓がいつでも使用可能な状態に保たれています。実質的にはあらゆる消火システム(消火ガスや二酸化炭素、そして最新のハロン注入システムまで)が備えられており、QE2に乗船されている限り、お客様の安全は確実に保障されていると言えるでしょう。
衛生設備及ぴ汚水処理設備に関しては、その処理に当たって必要とされる全てのものが完壁に備えられており、それは正式に公認されています。これらの設備は8デッキにありますが、主要空調設備は上記のエンジン関連設備と同じ場所に設置されています。また、4基のスタビライザー、バウ・スラスター(船首にある姿勢制御システム)、及び電気水圧舵取り装置のためのポンプなども同じ場所に備えられています。
この度、皆様が私どもと共に過ごされる船旅が快適なものとなりますよう、スタッフー同、全力を尽くしております。また何かご質問がございましたら、どうぞご遠慮なく私どもへお寄せ下さい。

チーフ・エンジニア

お客様から非常に多く寄せられる質問を下記に抜粋致しました。

Q:
QE2の最大出力はどの位ですか?
A:
95メガワット。これはサザンプトンの街を照らすのに十分な電力で、また、中型のファミリ一・カー3000台の出力とほぼ同じ容量になります。
Q:
燃料消費量はどの位ですか?
A:
28.5ノットのスピードで航行している時の燃料消費1は1日380トンで、この消費率は50フィート/ガロン(約3.5メートル/リットル)となります。
Q:
プロペラシャフト(心棒)の直径はどの位ですか?
A:
プロペラは制御可能ピッチでそれぞれ5枚の翼がついており、直径は6メートルより少し大きいくらいです。2本のプロペラシャフトは長さが80メートルあり、頑丈な十分に鍛えられたスチールで出来ており、直径は590ミリメートルあります。
Q:
エンジンの大きさはそれぞれどの位ですか?
A:
サンプ・パン(油溜)を含めたエンジンの大きさはダブル・デッカーパス(英国の2階建てパス)とほぼ同じです。またそれぞれに580ミリメートルのボアと640メートルのストロークのシリンダーが9本ついており、4ストロークのサイクルで動いています。
Q:
エンジンばどの位のスピードで動いていますか?
A:
ディーゼル・エンジンは400回転/分、推進モーターは144回転/分の速さです。
Q:
全ての燃料タンクを満タンにした時、どの位航行できますか?
A:
普通のスピード(28.5ノット)で、QE2は12日間航行し続けるのに十分な燃料を積んでいます。
しかし、速度をもっと落として20ノットの経済的な速度で航海した場合、30日間又は世界の3分の2を航行することが出来ます。
Q:
技術部門てば何人の人が働いていますか?
A:
機関及ぴ電気部門の士官は全部で24名です。また48名以上の技術者がおり、その中には機械技師、配管工、大工、電気技師、空調技師を含みます。
Q:
船が港に接岸している時は、全てが停止しているのですか?
A:
ほとんど停止している部分はありません!停泊中には、必要な修理や点検が行われます。またいつも必ず1つのエンジンが作動して、船内の電気や空調、厨房の施設を使えるようにしています。
Q:
スタビライザー(安全装置)はどのように作動するのですか?
A:
とても効果的に作動しています!2組のデニー・ブラウン・スタビライザーが60%まで船の揺れを抑えます。スタビライザーはジャイロスコープ(電気推進力を発生させて効果的な前進を行うための機械)によって制御されており、飛行機の翼のような形をした羽根の角度を水圧ポンプで交互に変化させたり、制御したりします。また、水の動きによっても羽根は持ち上げられたり、沈められたりして、悪天候による影響を抑えます。それぞれの羽根は船の即舷から2フィートまで突き出すことが出来、幅は6フィートあります。
Q:
コンピューターは機関室の中で使われていますか?
A:
広い範囲で使われています。動力維持システムは最大効果を確実に維持するため、要求に応じてエンジンを自動的に停止したり作動させたりします。また警報及ぴモニター・システムは外部に設置されたパラミーターのどんな機能をも勤務中の技師に伝えることの出来る非常に洗練されたシステムです。
Q:
どうして技術士官は紫に金線の肩章を付けているのですか?
A:
タイタニック号が沈んだ時、全ての技師が船と共に海底へ沈みました。時の英国王ジョージ5世が彼らの死を悼み、その日から船の技術士官はロイヤル・パープルを身につけるよう法例で定めたのです。


Back

ご意見、ご質問等はBBSでも受け付けています。お気軽にお立ち寄り下さい。