Column:与太爺の世迷言( 2002/10/10 現在 )船の揺れについて


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船の"揺れ"について

船の揺れは、大きく分けて、以下の6つに分類されます。

<船の重心を中心とした回転運動:主に航行中に発生する揺れ>

1 ローリング 左右に傾く
2 ピッチング 前後に傾く(上下動と感じる)
3 ヨーイング 船首と船尾が左右に振れる

<直線運動:主に停泊中に発生する揺れ>

4 スウェイング 船全体が左右に動く
5 サージング 船全体が前後に動く
6 ヒーヴィング 船全体が上下に動く

停泊中に生じる揺れに関しては、船酔いとは無縁です。
というより、通常の客船では、停泊時の固定の仕方なども関係することなので、
船という要素だけでは語れない部分です。一般的な客船ターミナルであれば、
こういった揺れに関しての注意は必要ないでしょう。
ただし、大きな客船ではよくあるケースですが、桟橋に停泊せず、沖合に停泊
して、ボートなどで上陸するようなケースでは、こういった揺れにも注意が必
要になります。

さて問題は、航行中の揺れになる、上の3つです。
"ヨーイング"については、船の剛性、波に対する向きなど、どちらかというと
構造的、人為的な要素が多い事象になります。また、船の大きさに比べて、人
間は圧倒的に小さいので、船全体でいえば"ヨーイング"でも、局所的な人間に
とって感じられる揺れは、後の2つの揺れに集約されてしまいます。ですので
心配しなければいけない揺れは、"ピッチング(縦揺れ)"と"ロール(横揺れ)"
ということになります。

巷で言われている「客船は揺れない」という根拠になっている"スタビライザー"
は、"ロール"にしか効き目がありません。"ピッチング"は船の長さがものをいい
ます。波の波長より、船長が長ければ、理論上"ピッチング"はおきません。これ
がだいたい150〜200m近辺になります。日本の船や、3万トンクラスだと、ここ
まで船長が無いので、海が荒れれば"ピッチング"を避けることはできません。
これが7万トン超クラスになると、船長が250m以上になりますから、理論的には
"ピッチング"はほとんど感じられなくなる筈です。

勿論、船の進行方向に対する波の方向など、当然、取られているであろう操船上
の手段がきちんとこうじられている事が前提となります。
とはいっても、所詮、海の上に浮かんでいるものですから、揺れが皆無になる
ことは、現時点の船舶ではありえません。論点は、あくまで、「船酔いするほ
ど揺れるのか?」という観点で見なければなりません。
そういう意味では、いわゆる"メガシップ"であれば、"理論上"は、船酔いに神経質
になる必要性はほとんどないと言って良いと思います。

ただし、個人の体調にも大きく左右されてしまうのが船酔いです。
風邪気味とか、疲れていたりすると、体本来の調節機構の働きが鈍りますから
当然、酔いやすくなります。体調が悪いような自覚があれば、何等かの船酔い
対策を講じるのが良いでしょう。


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