船の"揺れ"について
船の揺れは、大きく分けて、以下の6つに分類されます。
<船の重心を中心とした回転運動:主に航行中に発生する揺れ>
1 |
ローリング |
左右に傾く |
2 |
ピッチング |
前後に傾く(上下動と感じる) |
3 |
ヨーイング |
船首と船尾が左右に振れる |
<直線運動:主に停泊中に発生する揺れ>
4 |
スウェイング |
船全体が左右に動く |
5 |
サージング |
船全体が前後に動く |
6 |
ヒーヴィング |
船全体が上下に動く |
停泊中に生じる揺れに関しては、船酔いとは無縁です。
というより、通常の客船では、停泊時の固定の仕方なども関係することなので、
船という要素だけでは語れない部分です。一般的な客船ターミナルであれば、
こういった揺れに関しての注意は必要ないでしょう。
ただし、大きな客船ではよくあるケースですが、桟橋に停泊せず、沖合に停泊
して、ボートなどで上陸するようなケースでは、こういった揺れにも注意が必
要になります。
さて問題は、航行中の揺れになる、上の3つです。
"ヨーイング"については、船の剛性、波に対する向きなど、どちらかというと
構造的、人為的な要素が多い事象になります。また、船の大きさに比べて、人
間は圧倒的に小さいので、船全体でいえば"ヨーイング"でも、局所的な人間に
とって感じられる揺れは、後の2つの揺れに集約されてしまいます。ですので
心配しなければいけない揺れは、"ピッチング(縦揺れ)"と"ロール(横揺れ)"
ということになります。
巷で言われている「客船は揺れない」という根拠になっている"スタビライザー"
は、"ロール"にしか効き目がありません。"ピッチング"は船の長さがものをいい
ます。波の波長より、船長が長ければ、理論上"ピッチング"はおきません。これ
がだいたい150〜200m近辺になります。日本の船や、3万トンクラスだと、ここ
まで船長が無いので、海が荒れれば"ピッチング"を避けることはできません。
これが7万トン超クラスになると、船長が250m以上になりますから、理論的には
"ピッチング"はほとんど感じられなくなる筈です。
勿論、船の進行方向に対する波の方向など、当然、取られているであろう操船上
の手段がきちんとこうじられている事が前提となります。
とはいっても、所詮、海の上に浮かんでいるものですから、揺れが皆無になる
ことは、現時点の船舶ではありえません。論点は、あくまで、「船酔いするほ
ど揺れるのか?」という観点で見なければなりません。
そういう意味では、いわゆる"メガシップ"であれば、"理論上"は、船酔いに神経質
になる必要性はほとんどないと言って良いと思います。
ただし、個人の体調にも大きく左右されてしまうのが船酔いです。
風邪気味とか、疲れていたりすると、体本来の調節機構の働きが鈍りますから
当然、酔いやすくなります。体調が悪いような自覚があれば、何等かの船酔い
対策を講じるのが良いでしょう。